志賀原発を石川県知事選挙の重要争点にしなければならない3つの理由
Twitterやメールなどを通じていただくご意見の中に「志賀原発の問題は関心がない」「そもそも志賀原発なんか争点じゃない」というものが多々見受けられます。
こくらえみ候補の方は、「志賀原発の廃炉」を明確に重要政策に掲げて訴えていますが、一方の谷本まさのり候補の方はほとんどこの問題にふれず、十分な議論が巻き起こっていないことが大きな原因かと思われます。
ただ、志賀原発に関してはその危険性はもちろん、北陸の経済や産業に与える影響の大きさから原発の賛否は別として選挙では重要争点として扱われるべき問題のはずです。今回はそんな「志賀原発を重要争点にしなければならない3つの理由」についてまとめました。
1、志賀原発の危険性をどう考えるか
①活断層問題
志賀原発は直下に活断層が何本も走っており、その活動性の危険性が原子力規制委員会によって指摘されているのは報道されている通りです。北陸電力もその存在を認め、調査を進めている状況であり、「活断層の上に原発の重要施設は建設してはならない」という基準への違反も重大な問題です。
また科学者や市民団体の調査により、原発北9キロの「富来川南岸断層」、東1.5キロの「福浦断層」など過去に数度の大地震を引き起こした活断層の存在も明らかになっており、この「地震の素」ともいうべき危険地帯で原発を運転し続けるのかという問題が出てきます。
②事故時の避難対策
地図を見ればわかりますが志賀原発は能登半島の最も狭いところ(東西約12キロ)のあたりに立地しています。仮に事故が発生した場合、原発以北の奥能登から金沢方面に避難することは極めて困難です。住民9万人+観光客を安全に避難させられる計画は立っていません。
また福島原発事故などの状況を見れば50キロ圏内の金沢などの大都市にも放射能汚染が及ぶ可能性は高いですが、各自治体の有効な避難計画は立てられていません。
③事故発生率の高さ・事故対応の問題
1999年6月に志賀原発1号機が臨界事故(原発事故でかなり危険な状態)を起こしたことは全国ニュースでも報道され、大問題となりました。このほか2003年6月~10年9月の87か月で北陸電力が報告しただけでも88回の事故が発生しており、その後も重大な事故が相次いでいます。
加えて先ほどの臨界事故でも8年もその事故を隠ぺいした上に、事故対応が不十分な北陸電力の管理能力も疑問視されています。福島原発事故後の国会事故調査委員会の検討でも、「原発事故を終息させるために必要な経理的基盤や人的リソースなどに関して全く不十分」と指摘されています。
2、志賀原発の経済的影響をどう考えるか
①原発で作る電気は必ずしも安いとは言えない
Twitter上でよく寄せられる意見に「志賀原発が無くなれば電気代がむちゃくちゃ上がる」というものがあります。インターネット上のコラム・記事を調べると、ウランやプルトニウムが持つ膨大なエネルギー量が強調され、エネルギー効率が高く、二酸化炭素の排出も少ないクリーンな発電のように描かれていますが、果たしてそうでしょうか?
実際は「その電気を作るのにいくらかかったか」というのは、発電のコスト+発電所を建設するのにかかった費用+安全対策や処理費用 によって出さなければいけません。確かに発電のコストだけ見れば発電の大部分を占める火力発電より、原発の方が発電コストが安いとする試算もあります。
しかしここで問題なのは、建設にかかる費用や安全対策、処理費用にかかる費用です。
広く知られている通り、原発を建設するために多くの交付金が自治体にばらまかれています。これは言うまでもなく、私たちの「税金」です。また安全対策や核のゴミの処理費用、事故の際の対策費用にも多額の費用が使われていますし、まだまだ確立された技術ではなかったり、事故の対策費は実際にどのくらいかかるのか算出できないほどです。
つまり、発電コストに各種の費用を加えて発電にかかる全体の費用を見積もった場合、原発はむしろコストのかかる発電方法でしかなく、事故や安全対策、核のゴミの処理を考えればこれからよりいっそう高コストになるおそれさえあります。
②志賀原発は数十年後には必ず耐用年数を迎える。その時の能登の地域経済をどうするか。
1999年に稼働を開始した2号機は全国の原発の中でも最も新しいクラスの原発になりますが、今の基準で言えば1号機・2号機とも確実に数十年後には耐用年数を迎え、廃炉にしなければなりません。
その時に備え、志賀原発周辺や能登や石川県の地域経済をどのようにしていくかという問題は、志賀原発に賛成する人であっても、反対する人であっても考えていかなければならない問題です。
志賀原発周辺では、原発の定期検査や運転中に電力会社職員や協力会社職員の人たちが街を訪れるときに宿泊施設や商店を多くの人が訪れ、何とか産業が成り立っているという報道も地元紙ではたびたび流されています。つまり原発に依存して他の産業が成り立たなくなっています。
長期的にみて街がそして能登が持続していけるような産業構造(原発に替わる技術の確立、農林業業の再興など)を模索していく必要があります。
3、志賀原発の問題は県民、ひいては北陸地方、日本全体への責任
福島原発事故で明白になった1つの重要な教訓として「原発事故は広域的な被害を出し、日本全体への影響を及ぼす」ということが明らかになりました。放射能汚染が起こるような場合は直接その汚染が隣県にまで及びますし、避難の問題が発生した場合は広域的に受け入れをしなければいけないこととなります。
石川県の場合は、能登と隣の富山が地理的にも経済的にも密接な関係があり、原発で何かが発生した場合は被害が及ぶ危険性が非常に高い場所です。
また、谷本候補もその実績を強調していますが、北陸新幹線の開業に端を発する首都圏その他との交流人口が増える中、観光客や県内を訪れている人たちが原発の被害に巻き込まれない、または安全に避難できる計画を準備しておくことは、県知事としての国民のみなさんへの責任です。
これまでの谷本知事のように、「原発のことは国に任せる」という無責任な態度ではなく、隣県に被害を及ぼさない、石川県に来ていただいた観光客の方などの安全に責任を持つという意味で県独自で安全対策を検討することは最低限必要です。
最後に
志賀原発の問題は生活の安全面でも経済的にも、石川県そして北陸地方に大きな影響を与える重大な問題です。1つ付け加えると、志賀原発を管理する北陸電力は北陸地方の経済政策に大きな影響を良くも悪くも与えてきた「北陸経済連合会」というグループの会長や重役を歴代つとめるなど、地域経済に大きな力を発揮しています。
北陸電力とともに志賀原発はもちろん、エネルギー政策、地域経済のあり方、産業のあり方を対等の立場で考え、県民や国民の安全・安心の立場でしっかりと意見を伝えていく県知事が絶対に必要です。
「志賀原発はいろんな面で石川県の次の世代に重大な禍根を残しかねない問題。だからこそ今、石川県知事選挙を機に真剣に考えよう」
これが石川県知事選挙で志賀原発を重要な争点にしなければならない理由です。
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